本好きの秘密基地

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あやかし草紙 三島屋変調百物語伍之続/宮部みゆき

今回は宮部みゆきさんの『あやかし草紙 三島屋変調百物語伍之続』を紹介します。

時代小説系は読みづらそう……という苦手意識があったのですが、今では時代小説も楽しく読んでいます。

宮部さんが描くから魅力的なのか、はたまた私が好き嫌いしていただけなのか。

兎にも角にも、この三島屋シリーズのおかげで好きなジャンルが増えたわけです

今作は第一期完結編

読書好きの界隈でも大人気の三島屋変わり百物語、開幕です!

 

目次

 

あらすじ

百物語のようにお話を聞き集める三島屋シリーズ第5弾

(三島屋変調百物語 第二十三話~第二十七話に該当)

 

感想

今回の全体としての印象はときめきが詰まった一冊という感じです。

全話がそんなお話ということではないのですが、一冊読み終わった時の漠然とした印象がほっこりしたな~という印象だったのです。

かわいい、かっこいい、キュンとする、ほっこりする、感動する……。

そう感じる頻度が多めでした。

なので比較的シリーズの中でも読みやすいかなと思います。

もちろん、おっかないお話もありますよ!(後で訴えられても困るので言っておくが)

 

『第一話 開けずの間』

人の弱みにつけ込んで最終的は一家全滅寸前まで飲み込むという怖ろしくて憎らしい、完全悪趣味な妖。

それなのに喋り方に色気を感じるからなのか魅入られそうになります(臭いらしいが)

妖が悪いし怖ろしいのですが、願望に執着する人間が一番怖いのかもしれない

欲深さと、その欲求のために手段を選ばないという人間の愚かさが露呈したお話でした。

家族なのに、どんどん生贄に捧げがち

妖の思うツボです。おおこわい……。

『第二話 だんまり姫』

来た来た来た~!

人情たっぷり大感動の切なくて愛おしいタイプのお話!

怪談苦手さん! 怖ろしさレベルは格段に低いのでこのお話だけでも読んでほしい

一国様がかっこよくてかわいいので是非読んでほしい

だんまり姫も、おせいも、みんな一生懸命でかわいらしくて魅力的だけど、やっぱり一国様が最高です。

第一話と真逆で、思いやりが溢れていて人間を見直しました(自分も人間だけれど)

じんっとします。油断したら泣きます。

切ないけれど、優しくて温かく力強い、尊いお話でした。

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『第三話 面の家』

ファンタジーのような怪談でした。

お面が動いたり喋ったりする姿や、金小粒がじゃらじゃら出てくる様子が千と千尋の神隠しの世界を思わせます。(私はね)

世に起こる大事件や事故がじつはこのお面の仕業なのかもしれないと思ってみると、ちょっとおもしろいなという気持ち。(不謹慎にもそう感じてしまいます)

大事件を起こさないために面の家チームは日々奮闘していると思うと、彼らはヒーロー的存在でかっこいいなと思うのでした。

世界の裏側的な

世の平和は面の家のヒーローたちによって守られている。

彼らにお礼を申したい所存です。

聞き捨てにするというのは、本当に物を捨てるように扱うということではない。

むしろ尊重するからこそ、聞いた話をいじらない。聞き手の側で意味を足さない。

本文P406より

百物語のプロ聞き手おちかの極意

これは普段の私たちにも通づるものがあるなと思いました。

そのお話や語り手を尊重するなら、お話の内容を気安くいじらない

邪推も失礼だ

人のお話を喋ることは悪い事じゃない。別に問題ないし、よくあることです。

でも、せめてその点には気をつけて、尊重する気持ちは忘れずにいたいなと身を引き締める思いです。

『第四話 あやかし草紙』

なんとも言えない魅力を放つ期待の星、瓢箪古堂の勘一

彼が語るのはへんてこりんな冊子が起こした切ないお話です。

この冊子は予言書のようなものなのですが、勘一自身は読んだのかどうか。

しらばっくれるので、おちかモヤモヤ期です

別日に新たな語り手の死への恐怖がない余裕顔を目にした時、おちかは勘一も同じような表情をしていると気づき、何やら覚悟を決めるのです。

その覚悟が、まさかの……!?

おちか、かっこいい!

特にこの時代に、乙女のこの大胆行動は男前すぎる(今の時代でもよ!)

ニヤニヤが止まらんぞ。黄色い歓声が止まらんぞ。

勘一がその流れをつくると思っていたので不意打ちです

今までで一番おちかが凛々しく輝いている瞬間かもしれないです。

あ、あと丸子もかわいいです。落ち着きのなさがかわいいです。

そしてめでたく名のついた封印箱「あやかし草紙」。これからどんどん活躍しそうです。

いや、してほしいです。

『第五話 金目の猫』

白いほわほわの正体は縁起の良い金目の猫でした。

いや違うんだ。その金目の猫の正体は……!

袋物屋が忌み嫌う猫の姿にわざわざ化けた意味

これは愛があるからこそ、慕っていたからこその発想だなと感じて、感動しました。

最後の悪戯も人間らしい感情からのもので、卑しいどころか私は素直で可愛らしいと思っちゃいます。

 

自分は努力もして慕ってもいるのに恵まれなくて、諦めた環境。

その環境を難なく与えられて恵まれている人が、そこの愚痴や不評を振りまく

恨めしくもなりますよ……。

価値観の違いも人それぞれなので、愚痴る側の気持ちもわかるんだけれどね。

富次郎のうちは好きでも猫を飼えないという理不尽な環境というのも理解できます。

 

最後に

変わり百物語の世代交代も無事引き継がれ、まだ続くことの嬉しさと、聞き手が変わる事で雰囲気がどう変わるのかという期待。

次作も楽しみです◎

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