本好きの秘密基地

読んだ本への思いをありったけ書いていきます。読みたい本探し、本の感想を共有したい、おすすめ本がある(いつでも募集中だよ)。そんなアナタの場所でもあります。コメント欄で意見などを待っています。(誹謗中傷NG)

ジェリーフィッシュは凍らない/市川憂人

今回は市川憂人さんのジェリーフィッシュは凍らない』を紹介します。

第26回鮎川哲也賞受賞作です。

ちょこちょこ目にするし、帯にはあの十角館の殺人綾辻行人さんの賞賛コメント

これは読まないわけにはいかないと勝手に闘志に燃えて購入したわりに、2年ほど積読(ほんとさっさと読めよ自分!)

さて、期待値ちょっと上がっていますが、大丈夫か!?笑

 

目次

 

あらすじ

小型飛行船「ジェリーフィッシュが雪山で全焼しているのが発見された。

搭乗員はジェリーフィッシュの開発部の人間たちで、検死の結果、全員が他殺だった

閉ざされた場所での連続殺人。

犯人はどのようにして侵入し、脱出したのか。

そして犯人は誰なのか。

マリア&漣シリーズ第一弾

 

感想

難しかったぜ……。

理科学的なことがベースになっているので、飛行船の構造やしくみ、化学合成など、丁寧に説明してくれているにも関わらず、ド文系頭の私には難しかったです

それに加え、最近は日中ずっと暴力的な睡魔に襲われているという状態でもあったので、尚更理解なんてできるはずもなく、ちんぷんかんぷんでした……笑(個人的な事情)

それでも、お話を読み進めるために最低限は理解しようと、何度も同じところを読み返して、どうにかこうにかなりました。

理系のミステリー好きは、こういうの大好物でしょうな。

トリックもかなり入り組んでいる印象で、でも整理すると辻褄はしっかりと合っています。

 

アガサクリスティーそして誰もいなくなった綾辻行人さんの十角館の殺人のオマージュ的な感じで書かれたそうですが、どちらかといえば十角館の殺人を彷彿とさせる内容でした。

「終盤の一行が衝撃的」みたいな要素とか。

あの時のゾクゾクを思い出しました。

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犯人は、前半部分で「この人じゃない?」と思っていた人で、珍しく当たったのですが、でも最終的にはどうやって脱出したとかトリックについては全くわからなかったので、読み進めていって「やっぱりわからん!」となっていました。

結果的にね、解答欄を空白にして出さずに直感で埋めたテストみたいな感じで〇が貰えたみたいな感じです。うん。

 

最後のシーンが美しかったです。切なさと美しさで絵になる

犯人がどれほど彼女を愛していたかが、すっごく伝わる光景でした。

あの後どうなったのかなと思い巡らすのも、余韻に浸ることができて、個人的には好きな終わり方でした

 

本当はネタバレ要素として、事件の整理をここに書いていきたいところですが、今回は私のまとめが正確なのか自信がないので割愛させていただきます。(言い訳)

でもね

難しかったからといって、おもしろくなかったわけじゃないのです。

そこはわかっていただきたいのです。

本当は二度読みしたいくらいなのです。

でもちょっと、時間がないので、また今度だな……。

二度読みすれば、そして睡魔に邪魔されないベストな体調で臨めたら、理化学的な部分も理解できて、すっきりして、もっと楽しめるはず

そして第二弾の『ブルーローズは眠らない』も、同じシリーズだから難しいだろうけれど、読みたいです

今作もそうですがタイトルが素敵よね。そういうのすぐ読みたくなっちゃいます。

 

最後に

飛行船の構造や化学知識が多めで難しかったけれど、それでも、もう一度挑戦したくなるくらいにおもしろいお話でした◎

 

黄色い家/川上未映子

今回は川上未映子さんの『黄色い家』を紹介します。

第75回読売文学賞、王様のブランチBOOK大賞2023を受賞

キノベス!2024 第2位、そして2024年本屋大賞ノミネート

とにかく話題になっていて勢いの止まらぬ一冊です。

発売当初、読みたくて読みたくて。でも文庫化まで待とうと思っていたんです。

でも文庫化される頃にゆっくり読める生活ではないかもと思い、結局待たずに読んじゃいます!

 

目次

 

あらすじ

2020年、総菜屋で仕事をする花は、昔一緒に暮らした黄美子さんの事件記事を発見し、昔のことを思い出して心配と恐怖を感じる

当時、貧乏だった花は家出をし、黄色い家で黄美子さんたちと4人の共同生活を送っていたが、働いたお金は運悪く何度も失うことになり、ついにシノギ」に手を出してしまう

お金を求め、お金に狂わされ、彼女たちは破綻していく。

お金の持つ力は、人を幸せにするのか、それとも狂わすのか。

 

感想

ものすごい威力を感じるお話でした

ずっしりと重くて、気持ちがしんどくなり、そしてボリュームのあるお話なので、気力体力が必要ではありますが、それでもとにかく引き込まれる内容

冒頭から「一体何があったのか」と気になって、しんどいのに読む手は止まらない。

帯の人はなぜ、金に狂い、罪を犯すのかという言葉が、読み終わった後では重みが違ってきます。

 

主人公の花の人生が壮絶で、彼女の稼ぎ方は犯罪なのだけれど、悪いことなのだけれど、糾弾する気にはなれませんでした

普通の人生から外れてしまった人である彼女たちが生きるには、その術しかなかったようにも思えてしまう。

こんなことをしてはダメだ。でもじゃあ、それ以外にどうやって生活していけばいいのか

私にもわかりません。

環境などに恵まれなかった彼女たちが生きていくには、罪を犯すしかなかったのだから、簡単には責められないよなと思うのです。

そんな人たちがきっと、周りにいないだけで現実にもいる。

つらいつらい世界の闇を直視した気分です。

 

つらい生活から抜け出すために、目標のために、将来困ることのないようにするために。

目的は変われど、常にお金を求め、求め続けたがためにお金に執着し、狂わされる

お金に一生取り憑かれるように生きていかなければならない呪いを目の当たりにしたようで、その事実が、変貌していく様が、おそろしかったです。

そしてお金は人間関係をも狂わす。

いくら仲良しでも、思い合っていても、お金が絡んでくるとその関係はいずれ破滅へ転がっていく

人間関係において、お金が絡むと厄介なことになるというのはよく聞くけれど、その厄介がこのお話に痛いほど苦しく表現されていて、思い知らされました

お金の持つ力に慄くばかりです。

お金は大事だけれど、おそろしい。

作中にも度々出てくることだけれど、お金とは何なのだろうか

 

主人公の人生が壮絶と先ほど書きましたが、これが絶望を味わわされるほどの悲劇の連続

自分の力で一生懸命お金を手に入れても、理不尽なまでに何度も奪われたり消えていく

希望の光とも言えた居場所が、人が、あっけなく消えてしまう。

つらすぎる。私だったら立ち直れない。

ことごとくこんなことの連続で、それでも犯罪を犯しながらだけれど必死に生きる花は強く見えました

でも、お金にどんどん飲み込まれていく姿は、とてつもなく危うい少女です

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冒頭の流れ的に、黄美子さんってどんな悪女なのかと身構えていたけれど、全然思っていたのと違ってびっくり。

たしかに変わっているし頼りないけれど、愛のある良き人

黄美子さんは最後まで黄美子さんで、そんな姿に泣きそうになりました。

黄美子さんの事件の真相はわからないけれど、最後まで読んで黄美子さんという人物を知ると、黄美子さんは騙されたか嵌められたのかもしれないなと思う

ニュースの表面上では、黄美子さんは悪女の印象を受けるけれど、きっと大事な何かが隠されているのだと。

その見えない部分の可能性も考えずに、ニュースなどの内容を真に受けてしまうことも怖いことだと感じました。

 

名言

というか印象に残った言葉たちをご紹介します。

 

《自分で決めた人生を生きる人間なんか、この世にいないってことだよ》

本文P145より

思い通りに生きられる人は、たしかにいないですね。

環境とか、タイミングとか、状況とか。何かの要素が必ず障害になっているのだから

 

わたしたちの黄色だっておんなじで、自分が信じることで、励まされたり大丈夫だと思えることが大事なんではないか。

本文P180より

自己暗示って、曖昧だけれど意外にも精神的に支えてくれたりします

占い結果とか、ジンクスとか、花にとっては「黄色いもの」が。

 

『だいたいのことは、ぜんぶ調子の問題だよ。理由とか、本当はどうとか、そういうの誰もいらないんだよ。調子にのってるやつといると、自分までうまくいってるように感じるだろ、気分がよくなって、ぜんぐうまくいってるように思える。みんなそれが好きなんだよ。だから調子のってるやつに、人も金も、運も集まる。力をもつ。だからいちばん調子にのってるやつの言うことが、そのときいちばん正しいってことになるんだ』

本文P210より

衝撃を受けました。

でも言われてみればそうかと思う。調子のってる人といると、悪いものが来ないような気がして安心するって、なんとなく感じるもの。

これが世界のしくみなのかな。

 

「幸せな人間っていうのは、たしかにいるんだよ。でもそれは金があるから、仕事があるから、幸せなんじゃないよ。考えないから幸せなんだよ」

「金はわかりやすい力だよ。~省略~知恵絞って体使って自分でつかんだ金をもつとね、最初からなんの苦労もなしに金をもってるやつの醜さがわかるよ」

本文P373より

こちらも衝撃的な言葉でした。

お金があるから幸せとは限らない。お金を持っていても孤独を抱えている人もいるし。

お金や仕事がなくても能天気な人って幸せに見えるけれど、この原理なのか。(失礼)

自分で掴んだお金だからこそ、ありがたみや苦労が身に染みて、人間的にも魅力的になる。

莫大な財産とか、お金持ちとか、うらやましいけれど、代わりに私たちは必死にお金を掴もうとするからこそ賢くなり、いろんな知識も身につけていく

そう思うと、平凡も悪くない。

 

最後に

川上未映子さんの丁寧で優しい文章はそのままに、内容は生々しくてダーク。

ボリュームも内容も重厚なお話でした◎

 

あなたが殺したのは誰/まさきとしか ※ネタバレ要素あり

今回はまさきとしかさんの『あなたが殺したのは誰』を紹介します。

前作の『あの日、君は何をした』『彼女が最後に見たものは』がすごくて、このシリーズの最新作が出ると去年知った時、大興奮しました。

今回はどんな衝撃を与えてくれるのでしょうか!

 

目次

 

あらすじ

女性が自宅で何者かに殴られ意識不明で発見された。

さらに彼女の幼い子どもの姿が見当たらず、誘拐されたと見て捜索が始まる。

現場には、謎の便箋が残されていた。

時は遡って1990年代、北海道の島ではリゾート地「リンリン村」の建設が進んでいたが中止になり、それが原因で不穏な事件が起きる

現在の東京での事件と、バブル期の離島での事件。共通点の見当たらない二つの事件にはどのような繋がりがあるのか

三ツ矢&田所シリーズ第三弾

 

感想

期待値高めで読んだのに、その期待に応えてくれるおもしろさでした!

なんならおもしろさが更にアップデートされている。重厚感すごい。

さすがだ。もうこのシリーズは裏切らないと確信しました。

共通点のない違う時系列の事件がいつ繋がるのか、どう繋がるのかと、今回もドキドキわくわくでした。

ほんとギリギリまで、なかなか点と点が線にならない。

新事実や情報が発覚しても、また新たな疑問が登場して、解決どころか謎と興味が深まっていく。

そして繋がった瞬間の、ぞわぞわっとする感覚。

これよ、これ。この感覚がやみつきになるの!

だからこのシリーズ大好きなの!!

そうして線になって、事件の全貌が見えた気になるのですが、いやいや、もっともっと根が深いのですよ、この事件

そんなよくある動機や展開じゃないのよ。

目が覚めるくらいのびっくりな真実が、ギリギリまで二転三転して

人物相関図が終わり際にうごめくのよ……!

ああ、なんたること。

こんな悲劇が起こってしまうなんて。

運命の残酷さに、胸が苦しくなりました。

(感想を連ねている間に興奮再来してしまい、暑苦しく語ってしまいました)

 

今回のお話のテーマは親子と呪いかな。(ホラーじゃないよ)

まさきとしかさんといったら、母親の狂気を描くのがお上手だと思っているのですが、今回も母親の不器用さや人間くささ、子供への愛情(?)や執着が、読み手を飲み込むほど強烈に描かれていました。さすがです。

今回はいろんな親子が登場するので、それぞれの抱える価値観や不満を垣間見ることができます

こういうお話を読むたびに、親子という関係は難しいなと思ったりします。

正解なんてないのだけれど。

呪いについては、いろんな意味で感じます。

呪われるようなことをした自覚があるから、呪われていると感じる

母親の束縛や執着、放たれた言葉が、ずっと付き纏って、これは母が自分にかけた呪いだと感じる

このシリーズの愛すべきミラクル刑事三ツ矢も

「呪いだと認めた瞬間、呪いは発生するのだと僕は思います」

本文P512より

という持論で、呪いの存在を認めています。

たしかに、その人が呪いだと思い込めば呪いになってしまうのかもしれません。

思い込みというか、引き寄せの法則というか。

 

さてさて、今回も大暴れの三ツ矢さん。

本当に良いキャラしている。

鋭いの。すっごく鋭いのに、いろいろとズレていて、おもしろい

悪く言えば自分勝手なように見えますが、それをカバーする、いや上回るほどの魅力がある男

三ツ矢さんだからこそ、今回の事件の真相に辿り着けたし、おもしろくなったのです。

そしてそんな三ツ矢さんを一生懸命支える田所尊い存在です。

三ツ矢さんの一言一句に振り回されたり、嫉妬したり、怒ったり喜んだり。

もうあれじゃん。

三ツ矢さんに片想いしている図みたいじゃん。

恋する乙女みたいじゃん。

今後も2人が活躍する続きがありそうな終わり方だったので、これは第四弾を期待してもいいのかしら……!

 

※ネタバレ区域※

無関係に見える二つの事件の繋がり、そしてちょっと多めの登場人物を整理すべく、ここにまとめますので、未読の方はお気を付けください!

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◇永澤しずくはどうして亡くなってしまったのか。

死因は睡眠薬多量摂取により嘔吐し、喉を詰まらせたことによる窒息死。

光部には殺意がなく、むしろしずくちゃんのことが好きで「面倒を見てやっただけ」という善意での行動でした。

こんな結果になってしうなんて、なんだか切ないです……。

 

◇永澤美衣紗が変貌したのはなぜか。

ホストにはまり、彼が「生活感のある女は嫌い」と言ったのを真に受け、料理などをしなくなり、派手な格好で夜遊びするようになった。

 

◇小寺則子と常盤恭司の駆け落ち説の真相は。

未亡人となった則子に言い寄ろうとした五十嵐が、抵抗された弾みで殺めてしまい、そこに居合わせそうになった恭司も熊見によって殺められ、真相を隠すために、2人は駆け落ちしたのだという噂を流した

2人は何も悪いことをしていないのに、今まで汚名を着せられて勘違いされ続けてきたことが、とても苦しいです……。

 

◇数か月前に別事件で殺害されたはずの五十嵐善男の「私は人殺しです」という書置きがなぜ現場にあったのか。

真犯人である結唯を庇うために、小寺陽介が置いていったもの。

ちなみに五十嵐を殺めたのは陽介で、すでに2人殺めている自分が3人殺めたことになっても同じだという主張で罪をかぶろうとした。

自分の母・則子と恭司を殺めた3人の罪を主張するためでもあった。

 

◇永澤美衣紗はなぜ襲われたのか。

たまたま訪ねてきた結唯に「これで自分を思い切り殴ってくれ」と頼み、躊躇したが、美衣紗と自分の母の姿が重なり、夢中になって殴り続けてしまった

 

◇タイトル『あなたが殺したのは誰』の意味

結唯は死産だったと聞いていた我が子が存命していることを知り、様子だけでも知りたくて美衣紗と接触する。

そこから事件に巻き込まれて、娘(美衣紗)を殺した

しかし夢中で殴っている間は母を殺した感覚。

自白後、自分が殺したのは血の繋がりのない他人だったのだと知る。

という、人ひとりを殺めた事実は間違いないものの、結唯から見るとその対象がころころ変わっていて定まっていません

一体自分は誰を殺したのだろう。

そういう気持ちになってもおかしくない。

それにしても、この人違いは残酷な真実で、胸が苦しかったです……。

 

昔、結唯が引きずり込まれた事件も強姦ではなく、事を行ったのは合意の上だったという事実は意外で、それがあったからこそこの事件が起きたというのも、かなり細い糸の繋がりで、驚きがすごかったです。

 

最後に

前作に引き続き、いや、前作以上にすごくて、早くも今年のベスト3に絶対入れたいお話でした◎

 

滅びの前のシャングリラ/凪良ゆう

今回は凪良ゆうさんの『滅びの前のシャングリラ』を紹介します。

表紙とタイトルの美しさ、ここ数年話題の人気作家さんということで、ずっと気になっていた一冊です。

シャングリラとは理想郷のこと。

滅びの前の理想郷。どんなお話なのでしょう!

 

目次

 

あらすじ

1か月後、地球に小惑星が衝突し、人類が滅亡する。

混乱と絶望で荒れ果てる世界。

この事実を前にして、今まで死にたがっていた人たちの心に変化が訪れる。

 

感想

もしも、もうすぐ人類が滅亡するとしたら。

地球が滅びるとしたら。

誰しも一度はそんなことを考えたことがあるのではないでしょうか。(私はもちろんある)

終末を目の前に、私たちはどう思い、どんな行動をし、世界はどんな状況になるのか。

これが生々しいくらいリアルに描かれていました

何をしようがどうせ終わるのだと自暴自棄になった人類。

余裕なく、自分のことしか考えられない人類。

今までそこにあったはずの愛や思いやり、常識が皆無になった人類

おそろしかったです。

切羽詰まると、こんなおそろしいことになってしまうのか。

現実の今が、どんなに平和で幸せかを噛みしめたくなりました。

 

登場する4人の主人公たちは、自分の人生に絶望したり、不満を抱いたりしていて、いっそのこと人類滅亡してくれ、死にたい、終わらせたいと考えていた人たちでした。

そんな願いが現実のものとなってみて、皮肉にもそのおかげで、幸せな気持ちや状況に変化し、死にたくないと思うようになる

今更そんな幸せな状況に変化したって、もう皆死ぬのに、神様は意地悪だ

と思うか

最後の最後に幸せな気持ちを味わえて、生きている喜びを感じることができて満足だ

と思うか。

きっとどちらも感じるのでしょう。でも最終的には後者の気持ちで散っていきたいものですね。

彼らは皆、一緒にいたい人といることができて、やりたいことをやることができて、幸せそうでした。

ずっと寂しさを抱えていたそれぞれが、ちゃんと最後には孤独から脱出できた。感激です。

人類滅亡というおそろしい事態を前にしても、幸せそうでした。

本当に世界が滅びることになってようやく、本当の自分の気持ちに気づき、その気持ちに素直になれる

余命宣告とかもそうだけれど、自分の命の終わりが近づいていることを自覚すると、人は自分の気持ちに素直になれるのかもしれませんね

結果はどうあれ、とても温かな読後感で、さすが凪良さん。

 

『シャングリラ』

急に衝撃的な告白から始まったので、ゾワッとしました。(おもしろそうな予感)

いじめに耐える術を身に着け、ひとりで闘い、そんな自分に嫌気が差している彼の姿に、助けてあげたくなるけれど、どうすることもできないもどかしさ。

滅亡を前にして、もう怖いもの無しだからこそ大胆な行動を取ることができ、それが今までの自分と現状を大きく変えるという展開に、人間の底力と行動することの重大さを感じました。

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パーフェクトワールド

助けに入ってくれた強面の男性のお話に繋がります。

こちらも同様、冒頭からインパクト強め。

さらになんと、繋がる繋がる……!

男性の忘れられない相手は○○で(ネタバレだから伏せるよ!)、この男性はつまり○○だったのです。(伏せすぎて何を言っているのかわからないことになってしまったね)

繋がった時の爽快感といったら。

クズ男な印象ですが、不器用なだけで、頼りになるお方でした。

 

『エルドラド』

エルドラドとは、黄金郷や理想郷という意味合いだそうです。

このお話の主人公はお母さんです。

強くて、世間体に囚われていなくて、相手の意見を尊重できる、芯の強い女性。

登場人物の中で一番好きです。めっちゃかっこいい。

ここでもある出来事と人が繋がって、鳥肌が立ちました。

攻撃してきた新興宗教の信者が、彼らのことを「幸せな家族」と表現した時に、彼女が一番欲して憎んだ「幸せな家族」というものを今、自分はようやく手にしているということに気づいて幸せな気持ちになったという瞬間が、なにより素敵で感動でした。

 

『いまのきわ』

個人的に一番読み応えの強かったお話です。

歌姫Locoのお話。

才能があって人気者な人は、やっぱりどうみても恵まれていると思われがち。

皆から羨望の眼差しで見られる分、期待される分、苦労や恐怖、そして孤独がある。

わかっちゃいるけど、見えないから、知らないから、やっぱり表の部分で判断しちゃいます。

人気を得るために、維持するために、自分を捨てる。

最終的に自分じゃない自分が出来上がる。

それは、本当に自分が望んだことなのか。

これもすごく考えさせられる内容でした。

結果として、皮肉にも滅亡という事態が、彼女の本当の望みや姿を叶えてくれて、こういう絶体絶命の事態になってはじめて、人は自分の心と向き合えるのだなと改めて思いました。

 

最後に

人類滅亡という絶望を前に、自分の本当の気持ちや姿を見つけるという、意外にも救いのある物語でした◎