今回は伊坂幸太郎さんの『クジラアタマの王様』を紹介します。
伊坂さんの作品は何冊か読んでいて、おもしろくて私好みです。好きな作家さんのひとりです。
伊坂さんといえば個人的にミステリー小説のイメージが強いですが、この作品はRPGとかファンタジーみたいな内容で、今までの作品とは少し違った雰囲気です。
帯の世界の秘密を知っているか?という言葉に挑発され(言い方が物騒)積読本さし置いて早速読みました!
世界の秘密を目の当たりにして参ります!
目次
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あらすじ
お菓子メーカーに勤める主人公が、ある事件をきっかけに大物二人と知り合いになる。接点のなさそうな三人に次々と共通点が発覚し、さらには一人が夢の中で怪物と戦う自分たちの勝敗によって現実が左右されるという不思議な発言をする。
インフルエンザによってそれぞれが大ピンチになり、夢の中と現実の自分たちが奮闘し、事態を解決しようとする物語です。
感想
こういう伊坂幸太郎さんも良い!
今までのようなミステリー小説、物語がどんどん繋がって伏線回収! みたいなお話も大好きですが、それとは全然違う雰囲気のお話だけれど、これはこれでおもしろいです。
幅広い年齢層に受けそうな感じです。
あっち(夢のRPG世界)とこっち(現実)の世界の繋がり設定が子どもも好きそう。
まって、そもそもあっちが現実でこっちが夢……(ややこしくなるからこれ以上はやめます)
キャラ設定もサラリーマンから有名人まで幅広くておもしろいです。
そしてクスっと笑っちゃうような空気を和ませてくれる文章やジョークは健在です。
ああそうだ。伊坂さん、テンポよくおもしろい事サラっと出してくるタイプの作風だったな。安心する。
セリフなしマンガ風の挿絵が度々出てきて、これが更にに魅力的です。
マンガ風挿絵を挿入するという今までの小説にはなかった発想、めちゃくちゃ読みやすいです。文章だけでも内容は理解できますが、この挿絵があることで更に想像しやすくて、物語の緊迫感や世界観も頭に入ってきやすいです。
そして川口澄子さんの挿絵は素朴でかわいらしく、癒されます。次の場面のマンガ風挿絵が待ち遠しい気持ちで読んでいました。
伊坂さんの物語と川口さんの挿絵。この二つが連携することで、最高な作品に仕上がったわけですね。尊い。
タイトルにある「クジラアタマの王様」の意味が終盤になってやっと出てきました。
ずっと意味深に登場していた鳥、ハシビロコウのラテン語が「クジラアタマの王様」だったんですね。別物だと思っていて「クジラアタマの王様全然出てこんじゃん!」と思っていましたが、冒頭からガンガン出ていました。そういう事だったんだ。また賢くなっちゃいました。
人間を動かすのは、理屈や論理よりも、感情だ。
同じ罪を犯した人に対しても、感情が左右すれば、まったく違う罰を平気で与える。理屈は後からつける。
本文P430より
理屈や論理の方が説得力があり納得しますが、そんなこと言ったって最終的には情で判断されますよね。かわいそうだから、恩があるから、今まで活躍してくれたから、かわいいから、素敵だから、とか。
言われてみればそうだよな。最終的な理由って大体は感情で完結しているなって改めて思いました。
というわけで皆さん、徳を積んだ方が良いですよ。何かあっても大目にみてもらえるよ!(きっとこの文章が伝えたいのはそういう教訓ではない)
結末もすごくよかったです。素敵な終わり方。ほっこりしました。平和感。(唐突に作品の感想に戻ります)
ハシビロコウに会いに行きたくなりましたので、近々、動物園に行こうかな。
フィクションなのはわかっていても、なんだか本当に、今までの世界の困難や成功は、夢の中の勇者たちが怪物と戦って負けたり勝ったりした結果なのかな、と想像しちゃいます。そうだったらおもしろい。(他人事だからね)
コロナ禍の今も、夢の中の勇者が奮闘している最中なのかな。
勇者が見事勝利すればコロナも終息するのかな。
この作品はコロナ禍直前に発表されたもので、すごいタイミングで発表されたなと思います。実際に予言の書と騒がれていたみたいです。今まさに、この作品のような世の中なのでリアルに感じます。
これは余談なのですが
作中に坂口安吾の『不連続殺人事件』がちらっと出てきて、思わず声を出しました。
読んだことはありません。積読しているだけです。でも、おかげで更に読みたくなりましたので、そろそろ読みます。たぶん。
※↓読みましたので、この記事を参考にしていただければ!🙇(追記2022.10.25)
帯の世界の秘密を知っているか?の意味というか、答えというか。
「夢の中の勇者たちと怪物との勝敗で命運が決まる」という世界の秘密
という解釈をしました。私は。
最後に
今までとジャンルも構成も少し違った伊坂さん作品。現実離れ感が程よくておもしろかったです!
作品の幅が広がった伊坂さん、これからも楽しみです◎