今回は南海遊さんの『永劫館超連続殺人事件 魔女はXと死ぬことにした』を紹介します。
第25回本格ミステリ大賞 小説部門ノミネート
2025本格ミステリ・ベスト10、このミステリーがすごい!、ミステリが読みたい!2025年版ランクイン
という、貫禄を感じて期待値高めのこちら。
表紙の方の目力に気圧されながら、超連続とはどんな事件なのかとワクワクしながら読んでいきます!
目次
あらすじ
母の葬儀のために戻った永劫館で、妹が密室で亡くなっていた。
その後、何者かに殺害された魔女の「私の目を、最後まで見つめていて」という言葉に従うと、1日前に戻っていた。
そして妹の死、魔女の死の連続殺人が繰り返されていく。その中で魔女の呪いである「死に戻り」を使って、何度も繰り返し、ふたりで犯人を探し出すが……。
館、密室トリック、タイムリープが織りなす巧みに紡がれたミステリー。
感想
難しかった……。
密室というだけでトラックを想像することが難しいのに、それに加えて「死に戻り」や「道連れ」という設定があり、その影響でパラレルワールドみたいなことになっていて、どういうこと……? って何度も思い、つまずいて、理解するまで同じ文章を読み繰り返す。
なんとか理解できて、理解できた時は歓喜に浸っていました。
私、また少し賢くなったかも! みたいな。
理解できれば、このトリックも設定も伏線も、全てがお見事で、おもしろかったです。
そういうわけでして、このお話は、私のように頭で仕掛けを仕組みを想像するのが苦手な人には難解ですが、想像できる人にとってはとてもおもしろく考えがいのあるお話だと思います。
貴族の館が舞台で、中世ヨーロッパを彷彿とさせる雰囲気。
謎を秘めている一家。
登場人物の名前を覚えるのはたいへんですが、こういうのすごく好きです。
その中でも探偵のジャイロは癖強めで、最初は苦手でしたが、慣れてくるとジャイロの個性として受け入れている自分がいました。
その探偵ジャイロが活躍するお話かと思いきや、いや、活躍はしているのですが、この物語の主導権はヒースとリリィであり、あくまでも脇役なのです。
事件のお話だから探偵が大活躍するのかと思っていたので、そこの意外性もおもしろいです。
突然、館に訪れたリリィという名の魔女。
彼女の呪いや、母との関係、どうしてここに来たのかなどなど、この魔女のことだけでも謎だらけです。
ヒースも謎多き青年でして、なぜ家出したのか、家出後の3年間何をしていたのか、両親と何があったのかなど、気になる点がたくさん。
その中でも、家出後3年間の彼の正体は後に驚かされます。(このお話の中で一番びっくりで見事な伏線回収でした)
これ以上語るとネタバレしかないので、さっそく
※ネタバレ区域※
ここから先は、このお話の謎と、それにまつわる世界設定(呪いに関する)を書いてしまうので、未読の人は気を付けてください!
< スポンサーリンク >
・父の事件の犯人とトリック
仕掛けたのはヒース、仕掛けを発動させたのは母
縄の端に重りとして氷を詰めた袋を繋ぎ、井戸の側にスタンバイさせておく。
もう片側の縄を書斎の窓から出して、梁に絡めて置く。
父に睡眠薬を飲ませ、意識朦朧としているところに、首に縄をかけて置く。
梁や窓枠と縄の間に摩擦防止の氷のカケラを挟んでおく。
井戸に氷の重りを落とせば、トリック発動。
・コーディーの事件
仕掛けたのはリリィ、首に巻き付けたのはコーディー本人
◇動機
お互いに解呪方法が知りたかったので、コーディーに死に戻ってもらい、その先にいる母に解呪方法を残してもらうため。
◇意図
盲目なコーディーには自殺手段の全てが困難だったため、リリィが協力するしかなかった。
密室にしたのは、ジャイロの銃で図ろうとした時に、ことごとく彼に気づかれ邪魔をされたため、カモフラージュとして密室にした。
◇トリック
父の事件と同じ。
井戸→滝 氷→イチイの木 手動(母)→落雷
と置き換えた。
・解呪方法手紙を存在させる方法
リリィはコーディーを殺害することになるため、どうしてもそこにいるコーディーは「初めて殺されるコーディー」になる。
=死に戻ったコーディーでないので、手紙も存在しない
というジレンマを解消するため
リリィ以外の誰か(今回のヒース)から見たコーディーは、「死に戻ったコーディー」と「初めて殺されるコーディー」の両方が存在可能な状態になっているので
その状態で遺言と手紙を発見し、読むことで、ヒースの世界にいるコーディーは「死に戻ったコーディー」となって、手紙もそのまま存在し続ける。
・解呪方法
同じ境遇の魔女の心臓を食べること。
それらしい解呪方法に、納得と満足です。
最後に
今ここに、世界の仕組みをまとめていても、まだ難しいな~と感じています。
頭の体操にもなり、世界観も魅力的なお話でした◎