今回は川上未映子さんの『きみは赤ちゃん』を紹介します。
息子が1歳になるまでに読みたいと決めていた一冊なんです。
息子が赤ちゃんでいる間に。
とっても楽しみにしていた本なのです!
目次
あらすじ
川上未映子さんの息子くん(オニくん)がお腹に来てから1歳になるまでの、母の葛藤や苦労、しんどさ、嬉しさ、愛おしさなど、愛が溢れまくる妊娠出産育児エッセイ。
感想
愛がめっちゃ溢れている……!感涙
わかっていたけど、想像以上に最後まで愛がすごくて、しあわせな気持ちになる。
それは川上未映子さんの子(オニくん)に対する愛がもちろんほとんどなんだけれど、読者や、一生懸命生きる人たちに対する愛も感じました。
なんて母性の溢れた、尊い一冊なんだ。
出産経験ある人にはもちろんおすすめです。
懐かしくてほっこりしたり、笑えたり、いい意味で寂しくなったりもする。
でも一番読んで欲しいのは男性陣かな。
どうしたって男性は妊娠出産を経験できない。
だからこそ、この本で知って欲しい。
妊娠出産そして産後の女性の、強さや弱さ、たいへんさを。
それ自体、個人差があるのだけれど、大体こんな感じだから。
女性という体のしんどさを、この本から知って理解してくれたら、世界はもっと良くなる。優しくなれる。そんなふうに思います。
関西弁やユーモアのある文章で、とっても読みやすいので、是非とも読んで欲しい。
全人類に配りたいくらい、とっても読んで欲しい。
出産編|できたら、こうなった!
つわりの吐き気の「すわっすわ」という感覚は、うーん、ちょっとわかるような。でも、違ったような。
つわりっておもしろいほどに、個人差がすごいんですよね。感じ方も、程度も、種類も様々で。
「つわり いつまで」というワード検索を毎日とか、つわりを終えたみんながまぶしいとか、そういう日々の重ね方や思考は、まるっきり一緒で、懐かしくてもう、共感の気持ちでテンションも上がりました。
出生前検査のことは、当時私はよく分かりもしないまま受けたので、これを読んでおきたかったなと思うくらい、わかりやすく書かれていました。
「おなかの赤んぼうは100%こちらの都合でつくられた命で、100%こちらの都合で生まれてくるのだから、それならば、われわれはその『生』を100%の無条件で、全力で受け止めるのが当然なんじゃないだろうか。それが筋、ってもんじゃないのだろうか」
本文P32より
だって全ての出産は、親のエゴだから。
本文P90より
という考えたちに、私はとてもグサっと刺されてしまいました。
言われないと気づけない自分が情けないと思いました。
私も妊娠中、もしお腹の子が障害や病気を抱えていたらどうしよう……なんて不安になったりしていました。
あの時の自分にこの言葉をぶつけたくなりました。
どんな子であろうと、自分の都合で生まれる子なのだから、受け止めなさいよと。
でも『破水』以降のエピソードは、産んだ後に読んで良かったと思いました。
来たる出産に対してめちゃくちゃ恐怖が強まりそうだから。
終わったから、懐かしいな〜そうだったな〜と読めるわけで、産む前に読んだならもう気持ちが持たなそう。私は。
私は普通分娩で、無痛分娩の処置とか、帝王切開の処置とかを知らなかったので、私の経験と全く違う出産に恐怖しながら読み、勉強にもなりました。
とにかく出産は、どんな産み方であれ壮絶なのですよ。
そんな私は、しんどかったキツかったという気持ちはなんとなく覚えていますが、産んだら曖昧になって忘れたのだが。
なのであまり、出産にトラウマみたいなものは生まれずに済みました。ありがてえ。
ただ産後のやばさは覚えています……笑
そして両編にも書かれていた、子が犯罪者にだけはならないでほしいという気持ち。
これ、私も度々、考えるのですごくわかる。
なんなら、子ができる前から考えていた。
ニュースとか見て、うちの子も100%何も起こさないとは限らんよな……と急に心配になる。
これは親がどうしたって、起きてしまう時は起きてしまう。
どのように育てたらどのように育つ、という理論のいっさいが通用しないのが子育ての原理であって、子どもにかんする責任は、その子が何歳になろうと(とくに日本では)、親が問われることになっている。〜省略〜生まれるわが子を犯罪者にしてやろうともくろんだ親はたぶんひとりもいないはずで、どの犯罪者も、どの大悪党も、最初はこのように人のおなかからでてくるだけの、ただのかたまりであったらはずなのだ。
本文P60~61より
そんなことを私も常々思うので、共感します。
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産後編|生んだら、こうなった!
ここでも、ああ、わかるわかる。激しく共感。
授乳の激痛は、果たして本当に無痛に感じる日が来るのかとか(来た)
世の母は偉大だと毎日のように思ったりとか
産前に買ったベビー用品失敗談とか
でも、それでも、
川上未映子さんの場合は『赤ちゃんがピタリと泣き止む魔法のスイッチ』という本の一節に救われたように、私は母の「今はアナタはすごく大変だけどね、でもお母さんは子育てが過ぎ去った今、もっと楽しんで子育てすれば良かったなって後悔することがいっぱいなの」という言葉に気持ちが引き締まりました。
川上未映子さんと同じように「このしんどい日々も、いつか尊くてかけがえのない日々になるんだ。なるべく後悔ないようにこの一瞬に向き合いたい。噛み締めたい」と、意識朦朧としてイライラする中でも、なんとかそう思えました。
しんどくてツラいことだけじゃなくて、
我が子が無条件にかわいいとか、そういうのもすっごく共感です。
自分のことが好きじゃなくても、似ている我が子はなぜこんなにもかわいいのか……と考えたりするものです。
ほんと不思議。
よその子もめっちゃかわいいよ。でも我が子は格別。不思議。
離乳食もね、すっごく面倒なのですよ。(おい)
だけどね、川上未映子さんが言うように、
いまから思うと、よくもまあこんなに面倒くさいことが毎日毎日できたよなと信じられないけれど、わたしがやらねばオニが生きてゆけないので、気がついたらできていた、というのが実感のだよね。
本文P285より
なのだよ。
その時はもう子のために必死すぎてね。できちゃってるのよ。
心配しなくとも、その時になったらできちゃうのよね。
初めてのお熱のお話や、保育園に預けることになったお話は、すっごく参考になりました。
保育園に早くに預けることへの罪悪感を、払拭してくれました。(まだ預けれんけど)
保育園に預けることで、子もハッピー、自分も時間にメリハリがつくし自分時間が取れるしハッピーなのか!
みんなハッピーなら、罪悪感なんて抱いても無駄ですね。
断乳のお話もおもしろくて、私も割と呆気なく断乳できたのですが、形容の仕方に思わず笑ってしまうほど。自虐なんだけれど、おもしろくて、そして共感もしました。
『夢のようにしあわせな朝、それから、夜』がもう、胸がぎゅっとなりました。
ちょうど、私の子もこれくらいだからだろうか。
思うこと感じることが一緒で、感傷的で、ぐっときました。
もしも子に「なんで自分を生んだの、生んだりしたの」と聞かれたら
わたしがオニにものすごく会いたかったからです、すみません、と謝ろう。
本文P325より
という返事が、愛に溢れていて、私も同じように思うし、もし自分が母にそう言われたら、愛の大きさが嬉しくて泣いてしまいそうとも思うのでした。
『ありがとう1歳』なんて、さらに感極まりました。
息子ももうすぐ1歳という、近すぎる未来だからか、親として思うことが一緒だから、お腹に来てくれた時から今までのことが走馬灯のように駆け巡って、泣けてきました。
いつかは巣立っていくと知っていても、今の私にはやっぱり、その日が来ることが泣けるほどつらい。
でもそれは喜ばしいことでもあって。
最後の一節が頭に映像化して、自分と息子を重ねて、おいおいと泣くのでした。
来たる1歳の誕生日は、私も盛大にお祝いしよう。
あとがきたちも、オニくんの成長を知ることができて、川上未映子さんが数年後も日々奮闘している姿を知って、微笑ましくて、おもしろくて、でも私にも同じような未来が来ることに楽しみと不安とが入り混じる思いでした。
川上未映子さんと一緒にオニくんの成長を見てきた錯覚を覚えたので、ほんと、すくすく育っているようで嬉しい。
最後に
読んで良かった。本当に読んで良かった!泣
息子のことがさらに、無性に愛おしく感じて、世の母たちにも敬意を表したくなる、みんなに読んで欲しい愛のエッセイでした◎