今回は織守きょうやさんの『花束は毒』を紹介します。
第5回未来屋小説大賞を受賞した話題作です。
かっこよくも意味深なタイトルに、美しくも毒々しい装丁。
ずっとずっと気になっていました。
忙しくなる前に読んでしまえと、勢いづいて、さあさあ読むぞ。
目次
あらすじ
家庭教師をしてくれていた憧れの人が「結婚をやめろ」などという脅迫文を送られていることを知った主人公は、中学時代の先輩である探偵に、犯人の特定を依頼する。
当被害者は、過去の自分の汚点が明らかになることを避けるために、探偵に依頼することを渋っていたが、最終的には協力することに。
彼の汚点は、事実か冤罪か。
脅迫状を送り続ける犯人は誰なのか。その意図はなんなのか。
感想
このどんでん返しはえっぐい!
天と地がひっくり返るレベルのどんでん返しに、衝撃と混乱と、恐怖。ポイズン。
戦慄とは、まさにこのこと。ゾクゾクしました。
中盤、だれちゃって流し読みしちゃいましたが(私の集中力の無さか)、終盤の畳みかけで二転三転し、そこからは引き込まれて一気読みでした。止まりませんでした。いや止まれませんでした。
今回の被害者である真壁青年。
彼は、とある事件を機に、誰にも信じてもらえなくなり、そのせいで自分も他者に怯え、信じられなくなってしまったという、想像しただけでも生きにくい窮屈な人生を送っていて、でもそれは自業自得なのか、それとも急に不幸のどん底に突き落とされたのか、終盤までその天秤はグラグラ揺れていてわかりませんでした。
やっぱり冤罪なんじゃ……と思っていたら、動かぬ証拠があって、でもその証拠は……みたいな感じで、ギリギリまで確信が持てない。
ハッキリした時には、鳥肌がすごい。
そして真壁だけでなく、読者である私までもが人を信じられなくなる読後感でした。
帯に100%騙される戦慄!とありましたが、うん、騙される。
騙されなかった人なんているのかしらって思うくらい完璧な罠の連続でした。
先入観というのか、思い込みというのか。
まさか、今まで見てきた視点が逆だったなんてね。思いもしないわよ。
今までの思い込みは犯人の執着が見せた幻覚だったのかしら。
それにしても犯人の執着ぶりはホラーです。この世の果てまでって感じです。
描写では可憐で美しく表現されている花束ですが、全てを知った今、それは毒々しい花束に脳内変換されてしまいます。
そう、その花束は毒なのよ。
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終わり方も秀逸でした。
読者に委ねられた究極の2択。
正直、私は未だにその選択ができないでいるのです。
どうするべきかは決まっている。でも、それが本当に被害者にとって救われる選択なのかと考えると、100%そうとは思えないのです。
知らぬが仏って言いますから。
かといって、そのまま事が進んでいって、万が一その先で取り返しのつかないことが起こらないとも言い切れない。
そして本当のことを知ってしまったら、更に人間不信が悪化するのでは……。
でも知らせないと危険だよな……。(行ったり来たり思考)
ああ、悩ましい!
みなさんは、どうするべきだと思いますか?
残酷で恐怖心を煽るリスクがあっても真実を告げ、真犯人の野望を阻止するか。
真実を墓場まで持って行く覚悟で、現状幸せな二人をそのまま見守り続けるか。
最後に
想像以上にド派手などんでん返しに、鳥肌がぞわっとするポイズンなお話でした。
刺激を、戦慄を味わいたいならば読むべし◎