今回は宮部みゆきさんの『三鬼 三島屋変調物語四之続』を紹介します。
三島屋シリーズもついに4冊目。
主要人物が顔見知りのような感じがするくらい、愛着が湧いています。
少しお久しゅうございます、三島屋さん。
今回はどんなお話を集めて参ったのでしょう?
目次
あらすじ
百物語のようにお話を聞き集める三島屋シリーズ第4弾。
感想
苦しい、ほっこりする、感動する……とバラエティ豊かな百物語のラインナップです。
全体的には、宗教的な価値観のお話が中心となっている感じです。
今回はどれも涙腺が緩みます。いろんな意味でグッときます。
おちかの心も大きく動きます。
個人的には、このおちかの色恋のお話で一番泣きそうになりました。
予想が外れてびっくりするのと同時に、つらい。
そしてその現実を駄々こねずに受け止めるおちかが凛々しくて、でも余計に苦しい。
さらにそのタイミングで……。(詳しくは第四話にて)
現時点でシリーズ史上一番、感動する一冊でした。
まだまだ百物語は終わらないので、それもまた更新されていくことを密かに期待しつつ、それぞれのお話の感想を書いていきます!
『第一話 迷いの旅籠』
魔法使いのような絵師。その野望は身の毛もよだつようなおそろしさ。
今は亡き会いたい人がいる。
誰だってそうだけれど、死者を蘇らせるっていうのは色んな意味でリスクがありますよね。
その絵師が、野望に執着して狂い出して、力を発揮した時のシーンが、まるでこの世界を破滅させる魔王みたいに見えました。
例えるなら、エヴァの碇ゲンドウやハリーポッターのヴォルデモートのような。(根は良い人です)
迷いの旅籠に集まってしまった彼らを、手形を作って上手に極楽へ誘導する様子は、なんだか神秘的なものを見ているようで、気持ちがふわふわしました。
死んでしまった人に会いたいと思う人はたくさんいます。
しかし、いざ会ったとしても、生きている頃のようには行かないのです。
だから下手に呼び戻すことは危険極まりない上、お互いに幸せにはなれないのです。
そんなメッセージ性のあるお話でした。
悲しくて胸が締め付けられると同時に、この世とあの世には一線が必要である理由を改めて感じました。
『第二話 食客ひだる神』
なんとも心温まるお話!
2冊目に収録されている『暗獣』のような愛おしい妖という類のお話なのですが、こちらは悲しい気持ちにはならないタイプのものです。
愛嬌のあるひだる神。
ずっと一緒に過ごして、ずっと一緒に商いを盛り上げてきた仲間、家族のような存在。
そんな存在が急にいなくなっちゃうのは寂しいですね。
それを機に、ひだる神のように自分も郷へ帰ろうとする旦那の決意が、ひだる神との絆を思わせて、しんみりするのでした。
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『第三話 三鬼』
シリーズ史上、もっとも痛ましく、時代に置いて行かれている閉ざされた村社会の宗教的な、脅迫的な概念に怖ろしくもなるお話でした。
人も、鬼も護るために罪を犯す。
この姿のない鬼も、村を護るためにそうしてきたのだから、悪いものではない。
むしろ非があるなら、それを生み出した人々の方。
事件後は、素敵展開になっていてほっこりしました。(まじ安堵)
みんな報われたなって思うとすごく嬉しいです。
でも語り手は……、この展開はびっくりしたけれど、どこか納得もする部分もあります。
余韻が漂う最後でした。
さて、ここに登場する「鬼」と呼ばれたものはタイトルに「三鬼」と名付けられていますが、鬼はわかる。鬼って呼んでいたから。
「三」とはどういう意味か。
山の村が舞台だから、これ山鬼では?
と疑問に思っていたら、解説にて宮部さんの計らいが載っていまして、なるほど納得。
「三鬼」の「三」を「山」にするか迷っていたんです。山が舞台のお話ですから「山鬼」でもいいんですが、私としては東西の村ではない、三番目のあの世に近いところからくるものの話なので「三鬼」でもいいな、と決めかねていたんです。
本文670より
このお話は、あることをきっかけに東西に分かれている村のお話です。
そして「鬼」は三番目の架空の村から来るということで。
ここにこっそり「三」と出ていたので、このことかなと思っていたのですが、しっくり来ていなくて、でもこれでしたね。
解説を読んで、たしかに「三」のが深い意味で良い! と思いました。(手のひら返し)
『第四話 おくらさま』
先ほども書きましたが、最後、目頭が熱くなりました。
感動しました。胸が締め付けられる思いでした。
私てっきり、おちかは彼と結婚するという未来を想像していたので、ここでお別れになるとは……。
相手が亡くなるのも辛いけれど、こうやって別れるのも辛いですよね。
おちかの気持ちを考えながら読んでいたらもう、泣けてきちゃう……。
でも、ここで新参者現る。
しかも良いタイミングでひょっこり現れて、気の利いたことを言って、根掘り葉掘り聞きもしない。
絶妙に最高なお人。
今後の彼に期待するしかないです。ウキウキです。
おくらさまのお話も最高におもしろかったです。
おくらさまの様になってはいけない。
お梅の様になってもいけない。
このお話は、おちかにとって価値観を改める最高の機会になったことでしょう。
お梅もずっと辛かったろうに。だからこそ、このお話の説得力があります。
最後に
今まで読んできたシリーズですが、分厚くい本だったので、読み切れるか不安でしたが、全部のお話がおもしろくて感動的だったのであっという間でした。
おちかの色恋、今後どう動くのかも楽しみです◎
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