今回は薬丸岳さんの『天使のナイフ』を紹介します。
いつぞやに、ブログ「郵便局のおじさん9時40分ごろやってくる」のニードルさんにおすすめしていただき、ついに積読状態から打破しました。
ちらほら目にする作家さんで、さらにデビュー作&受賞作で、さらにさらに多読家ニードルさんのおすすめという読まずにはいられない条件目白押しです。
目次
あらすじ
妻を殺めた犯人は少年法で守られ、悔しさや憎悪の日々を送っていた。
事件から数年後、新たな動き(事件)があった。
その事件をきっかけに、妻の事件には意外な真相があったことが判明する。
なぜ妻は狙われたのか。
そして全ての事件の黒幕は何者なのか。
少年犯罪に対する法律の問題をテーマに繰り広げられるミステリー。
感想
こ、これは最高すぎる! 傑作すぎる! (早速結論)
ミステリーとしての構成もばっちりな上に、締めくくり方もスッキリとしていてグッときます。
さらにお話をただ楽しむだけでなく、少年法についても今まで以上に、真剣に考えさせられる内容です。
読書中も読後も、胸が熱くなる。
江戸川乱歩賞での予備選考で独走状態。本選で満場一致。
わかる。すっごくわかる。
文句なしで『天使のナイフ』がダントツです。(他の候補作知らないのに断言)
絶妙なタイミングで衝撃をくらわされるので、先が気になってグイグイ行きたくなります。
展開の緩急バランスが抜群です。
終盤まで二転三転をし続けて、驚きが止まらないです。
とにかく私は読書中、何度も来る衝撃展開からその都度強く引き込まれて、このお話から目が離せなくなるのでした。
もう釘付けです。
読み終わるまで、自分の周囲や現実に起こる物事なんて眼中にありません。(危ないぞ)
ちゃんと全ての伏線回収がなされて、バラバラの孤立状態だった事件が全て繋がって。
これで全て終わりだと思ったら、最後の最後に、本当に残り数ページで、真の黒幕の化けの皮が剥がされるという……。
最後の1ページまで油断なりませんよ、皆さん。
もちろん私は犯人を突き止められませんでした。
ことごとく外しました。
この人が犯人なのかと早とちりしては玉砕です。
違うのかよおお! 犯人君じゃないのかよおお!!
薬丸さんの掌でまんまと踊らされて狼狽するのです。
でも薬丸さんの掌、楽しいです。(?)
意外と衝撃の連続で楽しませていただいたストーリ展開ですが、感想の冒頭でも触れたように、少年犯罪と少年法について深く考えさせられるのが、このお話の第2の醍醐味です。
どんなに重い罪を犯しても、未成年は法によって守られる。
更生とは、彼らが将来を問題なく進むための教育を施すだけであって、反省や罪の意識についての教育はないという。
そして少年法は彼らを守るためにあるようなもので、被害者遺族は事件の基本的情報を知る権利すら与えされないし、ケアや保障もされない。
理不尽にもほどがあるではないか。
未成年の未来を守るだけで満足するなと憤ってしまいます。
せめて彼らに自分のしたことの罪深さを自覚させること、反省させることも同じ熱量で施してほしいと思うのです。
一番傷を負ったはずの被害者遺族を蔑ろにしないでほしいです。
でも加害者全員が反省しないわけじゃないということも忘れてはいけないですね。
更生や贖罪の正解や終わりがないからこそ、本当に罪の意識を背負っている加害者は一生もがき苦しむ。
被害者遺族に償っても償っても、罪の意識を背負って生きていかねばならない。
たとえその罪が自己防衛から起きてしまったものだったとしても。
こんな風に熱く語りたくなるほど考えさせられました。
被害者遺族側と加害者側の両方の意見を同等に盛り込むところもすごいです。
少年犯罪に対して考える機会を与えてくれて感謝です、薬丸さん。
※ネタバレ区域※
ここからは黒幕のこともベラベラ喋っちゃうので、未読の方は目を伏せてください!
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主人公の妻は計画的な殺人によって命を落としたという真相が、中盤になって発覚します。
これは一番の衝撃事実で、鳥肌が立ちました。
この後も互角の衝撃展開があるんですけど、これが皮切りなので一番です。
そして妻が罪を犯したという驚きの展開に、驚愕。
でもその事件は悲劇が悲劇を生むという、あまりにも苦しくて切ない事件。
自己防衛みたいなものではあるけれど、発端は自分の行動でもあるという複雑な気持ちにさせられます。
その事件に捕らわれて、ずっと罪を償おうとする彼女の姿勢に感動と切なさを感じました。
そしてその事件はまたさらに悲劇を生んだわけです。
償っても悲劇の連鎖は終わらなかったのです……。
首謀者はなんと歩美ちゃん。(いやまじで一度も怪しまなかったよ驚き)
協力者はなんとなんと丸山。(お、お前、まじかよ!)
丸山の一連の演技を完全に信じて疑わなかったので、すぐ犯人候補から外しちゃいました。こ、こやつ……!!
歩美ちゃんは、妻が殺めた男性の娘だったのです。
でも妻は歩美ちゃんの命を救っていました。
皮肉にも、自分の命を救ってくれた人は父親をを殺めた人で、復讐のために命の恩人を殺めてしまったのです。
切なすぎるだろ!!
これで一連の事件の真相は明らかになったように見えて
まだあるんだな~。
歩美ちゃんをそそのかした、さらなる黒幕がいたのです。
それは、妻の幼なじみである悦子ちゃんを殺めた、右手に痣のある犯人だったのです。(繋がっちゃったね……!)
そしてその人は少年法擁護派の弁護士、相沢秀樹。(全然眼中にもなかった……)
モブキャラ寄りの彼が2つの事件の黒幕だったとは……。(失礼よ)
ちなみに私はずっと、みゆき先生を疑っていましたが、善人でした。
薬丸さん、高野和明さんの『13階段』に感銘を受けて江戸川乱歩賞に挑戦したそうです。
そちらも読みたいです!
最後に
今年のベスト3には絶対ランクインしちゃうくらい、完成度の高いお話でした。(まだ5月)
まさかラストに感動しちゃうとは……!
ニードルさん、紹介してくださりありがとうございました◎
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