第6回山本周五郎賞受賞の作品です。
以前、宮部みゆきさんの作品をブログに書いたときにニードルさまがコメントでおすすめしてくださった作品です。
宮部みゆきさんのミステリーを読みたかったものの、どれから手を出そうか悩んでいたのでとてもありがたかったです!
タイトルからはどんなお話なのか見当がつきませんが、不穏な空気だけは表紙から読み取れます。少し厚めの本ですが、わくわくの心を持って、いざ!
目次
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あらすじ
婚約者が行方をくらましたので探してほしいという依頼を受けた求職中刑事の主人公。彼女のことを調べていくと衝撃の事実と謎が次々と判明する。彼女には重大な過去があり、さらに彼女の名前は別の人物のものだった。
彼女の名を騙っていた人は、本当は何者なのか。どうして彼女の身分を乗っ取ったのか。
そして本物は今、どうしているのか。
感想
現代では普通に、私も日常的に抵抗なく使用しているクレジットカード。
時代の背景もありますがクレジットカードの乱用が怖いものだと改めて感じました。
限度をわきまえて、正しく使用していれば問題はない。便利。でも一歩間違えれば危ない。人生めちゃくちゃになるかもしれない。
クレジットカードを作った頃は警戒心が強くてあまり利用しませんでしたが(作った意味ないじゃん)今は慣れて、ポイントもつくお得感から普通に使っています。(ポイントに弱い)
今まで通りの使い方で問題ないけれど、怖さを再確認できてよかったです。
今まで通り、乱用に気をつけて使用しようと思います。額を気をつけながらね。
クレジットカード使用をきっかけに起きる多重負債の罠のしくみ、それを解決する手段などが教科書並みに説明されている場面があるので、勉強になります!
ほんと、お金のことを学校で授業してくれたらいいのにね。でも最近は投資についての授業が始まるなんて噂を聞きます。私が学生の頃から導入してほしかったわ。(今、独学するも理解できず)
※クレジットカードのことだけでこんなに書いてますがミステリーです。
同時に浮かび上がる、謎に包まれた2人の女性。この2人の過去や人柄、接点を同時進行で調べていく。
似たような年齢でワケアリな2人なので、途中途中お話が入り乱れて、どっちの知り合いだっけ? どっちの過去だっけ? と混乱しました。(落ち着いて。落ち着けば大丈夫だから!)
全く一緒ではないけれど2人とも同じような境遇で、同じことから逃げて、悩んできた。そう、借金や過去から逃げてきた。
2人とも生きるために、幸せになるために必死だったことがすごく伝わります。
「あの娘がクレジット三昧の暮らしをしたのはね、そうしていると、錯覚のなかに浸かっていられたからよ」
本文P411より
心を満たす幸せの錯覚に浸りたいがために、その沼に知らない内にはまっていった。
最初は大した額じゃなかったから余裕ぶっていたら、どんどん膨れていった。
そんなことになるなんて、クレジット社会が始まったばかりの当時は誰も教えてくれなかったから。
現在はクレジットやサラ金の怖さがある程度浸透していて、対策も取られているけれど、誰の身にも起こりうることなんだと改めて思います。そして悪いのは限度をわきまえなかった利用者だけじゃない。見境なく貸す側も、それを勧める側も問題がある。
「夢を見ようと思ったら簡単なの。だけど、それには軍資金がいるでしょう。お金を持ってる人は、自分のを使う。で、自分ではお金がなくて、『借金』という形で軍資金をつくっちゃった人間が、彰子みたいになるんですよ」
本文P414より
今は大体の幸せを簡単にお金で解決できちゃうからね~。そう考えると怖いよね。
……またお金のお話に戻ってしまった!
でも大事だから。お金は一生付き合っていかなければならない問題だから。
このお話でもお金がキーワードだから。
まあ、そんな感じで若くしてたいへんな人生を送っていた2人なのですが片方が一線越えちゃいましたね。安心して生きるために共食いみたいな手段を思いついちゃった。題して身分乗っ取り作戦。
どうやって身分を乗っ取る標的を見つけて、どう決行したのか。
前半に出てきたいろいろが伏線でした。ここで回収されました!
真相がだんだん明らかになっていくと同時に、この作戦の異常さと怖さがね……。
あそこまでサラ金に追いこまれたら正常でいられないよね。経験していなくても理解できる。お父さん死んでいてくれって願っちゃうくらい人生に切羽詰まってるんだもん。この時点からもう異常な精神状態だったはずだし。
彼女は火車に乗ったまま降りられなくなっちゃったのでしょうね。
最後のクライマックスは、全てが繋がって決着がつく興奮と、待ちに待った異常者になってしまった彼女と接触するドキドキで
一番うおおお!! ってなりました。(言葉にできない)
すごくいいところで終わってしまったので、ムズムズしております。
おあずけにされて、悲しいです。終わるの悲しかったです。
最後に
ミステリーとしてもおもしろい構成でしたが、そこに織り込まれたお金のしくみが勉強になりました。ミステリーでもあり、経済小説でもある。
キャッシュレスの時代だからこそ、ぜひ読んでおきたい作品です。
紹介してくださったニードルさま、素晴らしい作品をありがとうございました◎