今回は、内山純さんの『土曜はカフェ・チボリで』を紹介します。
書店で見かけて表紙デザインと帯の美味しいデンマーク料理と極上の謎解きという言葉に惹かれ、しかし他にも欲しい本がいくつもあったので1時間悩みうろついた結果(平気でいつもこれくらい滞在する)購入を決意しました!
積読本もそっちのけで、いざ。
目次
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あらすじ
店主の都合により、週に一度しか営業しない素敵な空間のデンマーク料理カフェ。そこに訪れる人たちが抱える日常の謎を、アンデルセン童話になぞらえて推理を進めていくほのぼのミステリー物語です。全部で4話の中編小説たちです。
イタリアンとかではなくデンマーク。珍しいカフェです。
こんな人におすすめ
感想
お客さんが抱える謎よりも、デンマークの事やアンデルセン童話の事の方がめちゃくちゃおもしろかったです!(あくまで個人の意見です)
デンマークといえば風車のイメージしかなかったのですが、出てくる出てくる。デンマークの伝統や魅力が。読んでいておもしろいし、想像するといつか行ってみたいという気持ちになりました。できることなら今からでも。
食事も食べてみたいです。よく知っているあのデニッシュもデンマーク料理だったのは驚きでした。いや、デンマークに限らず北欧料理なのかな?
アンデルセンってデンマークだったんですね。それも初知りで、さらに調べるとアンデルセン童話って意外と知らないお話が多かったです。グリム童話と混同してしまっているせいかな。
今回出てきたアンデルセン童話は知っていました。有名どころですからね。でも、これってアンデルセン童話だったんだ! ってなりました。
これを機にアンデルセン童話も網羅したい欲が出てきました。(影響されがち)
ミステリー要素の方ですが、本当に日常の謎でした。でも、読んでいて全然推測できませんでした。これは専門的知識がないと解けない謎でしたね。
そう、デンマークの事だけでなく、他の雑学的な知識も推理過程でたくさん出てきました。それもおもしろくて、この本の魅力のひとつかもしれません。
『第一話 マッチ擦りの少女』
この作品の中で一番のほのぼのミステリーでした。結末にほっこりです。
全然検討もつかないし、証拠たちも結び付けられなくて難解でしたが読後感がすっきりでした。
でも、この推理が正しいかはわからないまま終わるのですが。推測して、これが一番辻褄が合うよね、みたいな。
「謎はすべて、あたたかい動機から生まれたものでしたね」
本文P66より
素敵な謎でした。これぞ極上の謎。
『第二話 きれいなあひるの子』
これも結末が全然推測できませんでした。(全話そうだけれど)
第一話が純粋できれいだったのに対して、こちらは人の醜さが露呈した結論でした。
『赤い靴』の誕生秘話や、鳩時計、カッコウ、閑古鳥の話、たくさんの豆知識が溢れた話でもありました。
アンデルセンではないですが『鷲の飛翔』という話の事も出てきて『みにくいあひるの子』とは逆の教訓を持った話だとか。
ここのあたりの会話はすごく深かったです。
「環境は人をよくも悪くも変えうる」
本文P142より
『第三話 アンデルセンのお姫様』
言わずともわかると思いますが難解でした。
こちらは大人とメルヘンの同居みたいなイメージのお話でした。ちょっときゅん。
監督さんが粋でかっこよかったです。「アンデルセンのお姫様」の意味にきゅん。
アンデルセンのお姫様のように幸せになってほしい。もうかっこいい!
※こちらも真相はわかりませんが、そうであってほしい。
『第四話 カイと雪の女王』
『アナと雪の女王』ってアンデルセン童話が原作だったのかと、ここで知りました。ちょっと内容が違っているけれど。
そして私が主人公の名前をすっかり忘れている事にも、ここで気づきました。
今までとはちょっと違う謎解きでした。事件らしい事件でした。
意味深なメッセージや暗号名たもの。最終話にしてミステリー色が強くなりまして、わくわくしました。
しかも! 今までの登場人物がぞくぞく出てきて、まさに総集編的なお話でした。
犯人も予想だにしない人物でした。一番おもしろかったかもしれません。
そしてラストはほっこり。
からのちょっとしたおもしろ衝撃展開。こういうの好きです。そういう失恋の仕方があったか……。
最後に
デンマーク愛とアンデルセン愛が溢れ出た素敵な作品でした。おかげで北欧の虜になっております。(早速、北欧カフェを探して食事しました)
写真:トスカカーカ(バターケーキ)とサマーハウスをお供に